「ここかな?」
休日のため友達とカラオケをしに待ち合わせ場所に向かっていた。人通りの少ない裏道を歩いていく。こっちの方が近いし、車どおりはあるから安全でしょ!
「あ、」
歩いていると浅見君がいた。今日もモデルのようにお洒落だな。と見惚れていると、ハッとして、せっかくなら声をかけよう。と早歩きで近寄る。すると小説がするっと落ちた。
「浅見君!」
小説を拾ってトントンと肩を叩く。すると、こんな裏道で声をかけられるとは思ってなかったのか、飛び跳ねて振り返る。
「あ、安達さん。こんにちは。」
休日に浅見君に出会えた!とニコニコしながら小説を差し出す。
「これ、落としてたよ。」
「ありがとう。」
渡そうとして手が滑って落としてしまった。思わず謝ると僕もよく落とすからと言ってくれて、意外とドジっ子な一面も知れた。
「あれ?」
読んでいたであろうページが開かれたが私が渡した栞が無い。
「ちょっと見てもいい?」
「いいけど?」
パラパラとめくるがどのページにも挟まってない。もしかして壊れた?顔を上げるとなぜ私が見たのかよく分かってないようだ。
「あの、猫のイラストが描かれた栞は?」
「あれなら家にあるよ。」
良かった。壊れたわけじゃないんだ。とホッと胸を撫でおろしていると、衝撃の一言を聞く。
「いつ手に入れたか分からないけど大切なものだったはずだから保管してるの。壊れたら直せるか分からないし。」
「……え。」
何を言ってるの?その栞は私が渡したものでしょ?震える手で本を返す。
「……僕、またなんか忘れてた?」
本を返しても無言でその場を去ろうともしない私に察した浅見君は申し訳なさそうに聞いてきた。
「……ううん、大丈夫。私そろそろ行くね。」
でも今の浅見君に言っても思い出すどころか更に追い詰めてしまう。それなら黙っておこう。
「またね。」
あの日からモーニングコールをしたりバスで話したりはしているけど、浅見君は前日に話したことすら覚えてないときが多い。でも、私以外の事は覚えている。この現象は一体なんだろう。
「おはよう。」
「おはよう、……えーと、」
今日もギュッと胸が締め付けられるのを感じながらもめげずに話しかける。何を思い出そうとしているのか、一緒に考えてあげる。
「どうしたの?」
「……えーと、
君の名前なんだっけ?」
なるべく穏やかに責めずに話をする。
「大丈夫だよ。私の名前は、安達 美優香。」
「安達さん、ね。ごめんね。なんか忘れっぽくて。」
「ううん。気にしないで。またいつでも聞いて。」
そのあとも色々話したが悪化している。でも覚えてほしいと思えば思うほど浅見君は苦しんでしまう。だから私は聞かれただ答えるぐらいで、すべてを受け止めることにした。
「どうしよう。」
家に帰ってお風呂に入りながら、ボーっと考える。浅見君はなぜ突然、変わったのか。あの日、何を話したかったのか。
「ねえ、浅見君?」
呟いた言葉にもちろん返事は返ってこない。なら、言ってもいいかな?
「浅見君。
……好きです。」
一人で恥ずかしくなり湯舟の水に顔を半分入れてブクブクと泡を立てる。
愛しています。だからどうか思い出して。
次の日、朝起きると余裕な時間で、そういえば今日モーニングコールかかってきてないな。まさか寝坊?そう思い慌てて電話をかける。
『もしもし。』
『もしもし!良かった起きてた!』
『安達さん、だっけ?起きたけど早くない?』
まだ寝起きなのか寝ぼけた声でゆっくり話している。早い?だってもう、そう思い、時間を見ると見間違いでまだ五時だった。
『ごめん!見間違えてた!』
『いいよ。もう一回寝るから。ところでなんで電話かけてきたの?』
『……モーニングコールしようって決めて、最近毎日話してたでしょ?』
『……覚えてない。』
嫌な予感は的中した。だよね。だって浅見君は欠かさず毎日かけてくれた。ということは、
『そっか。大丈夫だよ。じゃあ、またバスで!』
大丈夫だよ。私のことを忘れないでいてくれたらそれで。電話を切って寝ようかと思ったけど目が冴えてしまったため、ベッドの上でSNSを眺める。
「行ってきます。」
「あ、美優香。今日、雪降るみたいだから傘持って行ってね!
あと、今度こそ浅見君と相川君連れてきてよ!」
家を出ようと扉に手をかけるとお母さんは最近毎日言ってるお願いをしてくる。昨日まではまたいつかね!って言ってたけど今日は言えない。
「……なんとかまた仲良くなったらね。」
私の言葉はお母さんのいる部屋までは響かなかった。
「?なんか言った?」
「ううん。なんでもない。行ってきます。」
テンションダウンの中、傘を取って扉を開けて歩きだした。浅見君に出会ってからは無くなっていたけど、今日はバスが億劫になっていた。今までは学校やだなとかだったけど、今日は、浅見君との関係が壊れませんようにその一心だった。
「ご乗車ありがとうございます。次は。」
バスに乗ると浅見君がいた。でもこちらは見てくれない。
「おはよう。」
なんで振り向いてくれないの?不思議に思いながらもなにか怒らせたかもと恐る恐る声をかける。
「……君は誰?」
私は口を開けたまま固まってしまった。
浅見君……?
休日のため友達とカラオケをしに待ち合わせ場所に向かっていた。人通りの少ない裏道を歩いていく。こっちの方が近いし、車どおりはあるから安全でしょ!
「あ、」
歩いていると浅見君がいた。今日もモデルのようにお洒落だな。と見惚れていると、ハッとして、せっかくなら声をかけよう。と早歩きで近寄る。すると小説がするっと落ちた。
「浅見君!」
小説を拾ってトントンと肩を叩く。すると、こんな裏道で声をかけられるとは思ってなかったのか、飛び跳ねて振り返る。
「あ、安達さん。こんにちは。」
休日に浅見君に出会えた!とニコニコしながら小説を差し出す。
「これ、落としてたよ。」
「ありがとう。」
渡そうとして手が滑って落としてしまった。思わず謝ると僕もよく落とすからと言ってくれて、意外とドジっ子な一面も知れた。
「あれ?」
読んでいたであろうページが開かれたが私が渡した栞が無い。
「ちょっと見てもいい?」
「いいけど?」
パラパラとめくるがどのページにも挟まってない。もしかして壊れた?顔を上げるとなぜ私が見たのかよく分かってないようだ。
「あの、猫のイラストが描かれた栞は?」
「あれなら家にあるよ。」
良かった。壊れたわけじゃないんだ。とホッと胸を撫でおろしていると、衝撃の一言を聞く。
「いつ手に入れたか分からないけど大切なものだったはずだから保管してるの。壊れたら直せるか分からないし。」
「……え。」
何を言ってるの?その栞は私が渡したものでしょ?震える手で本を返す。
「……僕、またなんか忘れてた?」
本を返しても無言でその場を去ろうともしない私に察した浅見君は申し訳なさそうに聞いてきた。
「……ううん、大丈夫。私そろそろ行くね。」
でも今の浅見君に言っても思い出すどころか更に追い詰めてしまう。それなら黙っておこう。
「またね。」
あの日からモーニングコールをしたりバスで話したりはしているけど、浅見君は前日に話したことすら覚えてないときが多い。でも、私以外の事は覚えている。この現象は一体なんだろう。
「おはよう。」
「おはよう、……えーと、」
今日もギュッと胸が締め付けられるのを感じながらもめげずに話しかける。何を思い出そうとしているのか、一緒に考えてあげる。
「どうしたの?」
「……えーと、
君の名前なんだっけ?」
なるべく穏やかに責めずに話をする。
「大丈夫だよ。私の名前は、安達 美優香。」
「安達さん、ね。ごめんね。なんか忘れっぽくて。」
「ううん。気にしないで。またいつでも聞いて。」
そのあとも色々話したが悪化している。でも覚えてほしいと思えば思うほど浅見君は苦しんでしまう。だから私は聞かれただ答えるぐらいで、すべてを受け止めることにした。
「どうしよう。」
家に帰ってお風呂に入りながら、ボーっと考える。浅見君はなぜ突然、変わったのか。あの日、何を話したかったのか。
「ねえ、浅見君?」
呟いた言葉にもちろん返事は返ってこない。なら、言ってもいいかな?
「浅見君。
……好きです。」
一人で恥ずかしくなり湯舟の水に顔を半分入れてブクブクと泡を立てる。
愛しています。だからどうか思い出して。
次の日、朝起きると余裕な時間で、そういえば今日モーニングコールかかってきてないな。まさか寝坊?そう思い慌てて電話をかける。
『もしもし。』
『もしもし!良かった起きてた!』
『安達さん、だっけ?起きたけど早くない?』
まだ寝起きなのか寝ぼけた声でゆっくり話している。早い?だってもう、そう思い、時間を見ると見間違いでまだ五時だった。
『ごめん!見間違えてた!』
『いいよ。もう一回寝るから。ところでなんで電話かけてきたの?』
『……モーニングコールしようって決めて、最近毎日話してたでしょ?』
『……覚えてない。』
嫌な予感は的中した。だよね。だって浅見君は欠かさず毎日かけてくれた。ということは、
『そっか。大丈夫だよ。じゃあ、またバスで!』
大丈夫だよ。私のことを忘れないでいてくれたらそれで。電話を切って寝ようかと思ったけど目が冴えてしまったため、ベッドの上でSNSを眺める。
「行ってきます。」
「あ、美優香。今日、雪降るみたいだから傘持って行ってね!
あと、今度こそ浅見君と相川君連れてきてよ!」
家を出ようと扉に手をかけるとお母さんは最近毎日言ってるお願いをしてくる。昨日まではまたいつかね!って言ってたけど今日は言えない。
「……なんとかまた仲良くなったらね。」
私の言葉はお母さんのいる部屋までは響かなかった。
「?なんか言った?」
「ううん。なんでもない。行ってきます。」
テンションダウンの中、傘を取って扉を開けて歩きだした。浅見君に出会ってからは無くなっていたけど、今日はバスが億劫になっていた。今までは学校やだなとかだったけど、今日は、浅見君との関係が壊れませんようにその一心だった。
「ご乗車ありがとうございます。次は。」
バスに乗ると浅見君がいた。でもこちらは見てくれない。
「おはよう。」
なんで振り向いてくれないの?不思議に思いながらもなにか怒らせたかもと恐る恐る声をかける。
「……君は誰?」
私は口を開けたまま固まってしまった。
浅見君……?


