ぼくたちのひみつきち


「い、伊草!驚かせないでください!!」


怯えたように体勢を低くしながら一が声の主に叫んだ。

伊草さん…一が呼び出さなくても出てくる事があるんだな…。

まだ心臓がバクバクしてる…。

甘太郎が恐る恐るテントの入り口を開くと、そこには黒いカサを差した伊草さんがいた。

伊草さんは一に「も、申し訳ございません」と謝罪したあと、小さく咳払いをする。


「ですが坊ちゃん、そろそろ空手のお稽古のお時間です」


「あ…もうそんな時間でしたか」


一がぼくたちを見た。


「皆さん、すみません!先に帰らせてもらいますね」


「あぁ…うん」


「日曜日なのに大変だな」


「じゃあな、一!また明日!」


別れを済ませて一がテントから出ようとした。

外にはまだ小雨がパラついている。


「坊ちゃん、本日へどのカサにしましょうか」


伊草さんがどこからか数本のカサを取りだして一の前に差し出した。

それを見てぼくらは目を瞬かせ、3人で互いに顔を見合わせる。

そしていまだ振り続ける雨と一のカサを見たあと、一に声をかけた。


『…余ってるカサ、借りて帰ってもいい?』


「あ、はい。大丈夫ですよ」


サラリと答えた一の許可をえて、伊草さんからカサを受け取り外に出る。


「最初から伊草さん呼んでもらえばよかったな…」


『うん』


去って行く2人を見送りながら、ぼくらはため息を吐いて裏山をあとにした。