引っ込み思案で地味な同級生の素顔は、大人気モデル!?【更新不定期】




その日の放課後は珍しく特別教室の掃除に当たってしまって、他に掃除にあたった女の子二人と話しながらさっさと手を動かす。


あとはゴミをまとめて捨てるだけ、というところで二人の女の子が何かを思い出したのか「あっ」と声を上げる。



「え、どうかしたの?」


「ご、ごめん紗良ちゃん!私達これから彼氏とデートがあって、ゴミ捨てに行ってたら約束の時間に間に合いそうになくて……」



申し訳なさそうに手を合わせる二人を見ながら、私は正直安心していた。



どうやって彼と話すか考えてたところだったからね……。


逆に二人きりに慣れてちょうどいいかも。



「そうなんだ!それは行ってきなよ、ごみ捨ては私と月城くんに任せて!」



私が後ろで一人黙々と窓を拭いていた男の子を指さしてそう言うと、「え…」とかすれた声が聞こえてきたけど、無視して二人の背中を押して教室から追い出す。



「またデートの感想教えてね!」


「うん、ほんとにありがとう!」



嬉しそうに手を振ってくれる二人に手を振り返して、私は深呼吸してから教室に戻って月城くんの目の前まで行く。



「月城くん」


「はっ、はい……なん、でしょうか、い、一ノ瀬さん……」



私に何を言われるのか不安なのか、手に持っていた雑巾を握りしめながらどんどん体を縮めていく。



「ど、どうしてモデルって教えてくれなかったの!?」


「……へ?」



私の質問が予想外だったのか、何を言っているのかわからない、と言うように首を傾げる月城くん。



「へ?じゃないよ!朝聞いたとき……」



『次の質問!どうしてそんなにイケメンなのに隠してるの?』


『え、そ、それは…ま、周りに見せるような顔では、ない、ので……』



って言ってたじゃん!!


モデルしてるから周りにバレないようにしてるって言ってくれればよかったのに!!



私の言いたいことがなんとなくわかってきたのか、月城くんは焦ったように話し始める。



「そ、その、一ノ瀬さんは、もう、僕のしょ、正体に気がついているのかと……」


「……え?」


「い、いつも、た、高橋さんと、その、僕…の話をしてるのが聞こえ、てたので……」



会話を盗み聞きしてしまってすみません……と申し訳なさそうに俯いている月城くん。



「いや、こっちこそごめんね……月城くん、超有名なのに気がつけなくて……」



芸能人だから、すぐに正体を分かってもらえなくて悲しかっただろうな……。


しかも、普段から美渚に写真とか動画とか見せてもらってたのに……。


……動画?



「ねえ月城くん。話すの苦手って話してたけど、インタビューの動画とか見てたら苦手そうに見えないんだけど…」


「あ、そ、それは……その、何度も撮り直してもらってて……み、未公開映像を見たら、きっと、幻滅、しますよ……」


「へー……でも、幻滅はしないよ?朝も言ったけど、話すのが苦手なんて普通のことだし」



幻滅すると思われたくなくて、ちゃんと否定する。


誤解はされたくないから。



すると月城くんは、私の言葉が予想外だったのか驚いたように目を見開いた。



「あ、ありがとう、ございま……」



月城くんがそこまで言ったタイミングで、教室に携帯の着信音が鳴り響く。



「あ、す、すみません…僕です…あの、ちょっと出ます……」


「あ、うん。どうぞ」



律儀に私の了承が出てから携帯を耳に運んだ月城くん。



「も、もしもし…はい、え?きょ、今日ってオフの日じゃ……はい…えっ…」



月城くんが明らかに困ったような声を上げて、思わずゴミ袋の口を縛っていた手を止める。



「どうかしたの?」



電話を切るのを確認してからそう声をかけると、月城くんは今にも泣き出しそうな表情で私を見つめた。



「あっ、あのっ…一生のお願いです……今日の仕事について来てもらえませんか……っ!」


「……え?」



+   +   +



「いや〜、急に来てくれ、なんて言ってごめんね。…それで、その、隣の方は……?」



月城くんには笑顔で挨拶していた男の人が、訝しげな目で私を見てきて緊張で背筋が伸びる。



だ、大丈夫…月城くんと対策は考えてきたんだから……っ!




『ついて来てって言われても……あなた誰?って言われたらどうするのよ……』


『そ、それは大丈夫っ……なんか、その…モデル志望とでも言えば……!』


『……月城くんって意外と適当なんだね……』


『えっ⋯』




「私、モデル志望でして、つきし⋯陸斗くんにお願いして見学させてもらおうと⋯⋯」



苦し紛れにそう言うと男の人は納得したのか、なんなら嬉しそうに手を差し出してくれた。



「そうだったのかい!私はこの雑誌の編集長をしている大久保だ。モデルのことで聞きたいことがあったらいつでも相談にのるからね」


「は、はい⋯ありがとうございます⋯⋯」



⋯なんでこんなにうまくいくんだろう⋯⋯うまくいきすぎて逆に怖い。



「それにしても陸斗くん、いい人材を見つけたね」



いい人材⋯⋯?



何を言っているのかわからなかったけど、大久保さんが話し始める前に月城くんが遮ってしまう。



「いっ、いえ……そ、それで、僕は何をすれば……」


「あぁ、そうそう。来れなくなった子の代わりに雑誌の表紙をしてほしくて…」


「ひょ、表紙ですかっ!?そ、そんな…いいんですか…?」