「ごめんね陸斗くん、遅くまで連れ回しちゃって……」
「い、いえっ、こちらこそ、泊まらせてもらってすみません……」
デビュー当初からマネージャーをしてくれている鈴木さんがホットミルクを手渡してくれて、お礼を言いながらそう言う。
今日は学校が終わってからすぐに鈴木さんと合流していろいろなドラマの撮影現場に連れて行ってもらって、気がついたら午後七時になってしまっていたから、そこから近かった鈴木さんの家に泊まらせてもらっていた。
ここから高校までは自分の家よりも近いから、朝が楽だから正直助かっている。
「それでね、俺から監督にお願いしたら演技の指導もしてれるらしくて、これからしばらく火・木・金は今日みたいに遅くまで稽古して俺の家に泊まってもらうことになると思うんだけど、それでも大丈夫……?」
心配そうに眉を下げて聞いてくれる鈴木さんに笑いかけながら頷くと、安心したように笑い返してくれる。
鈴木さん、他の仕事でも忙しいはずなのにわざわざ僕のために監督に直接お願いしに行ってくれたんだろうな……。
鈴木さんの努力を無駄にしないように僕も頑張らないと……っ!
+ + +
「……は、早く出すぎたかな…」
誰もいない教室を見渡して、思わず苦笑してしまう。
普段通りの時間に目が覚めてなんとなくいつも通りに用意をして鈴木さんの家を出ると、一番乗りになってしまった。
「せ、せっかくだから、セリフ練習でもしようかな……」
僕は小さい頃から人と話すのが苦手で、話せても言葉が途切れ途切れになってしまう事が多いから、今回任されたドラマの出演のことも少し不安だったけど、役に入り込むと何故かスラスラと言葉が出てきて結構楽しい。
えっと…この前練習したところをしたいから…ここかな。
こんな早くから誰も来るはずないと思ってたから、いつもならちゃんとつけている眼鏡を取って、前髪も分ける。
「俺の大事な子に手を出すなっ!」
僕のそのセリフと背後の扉の開く音がしたのは同時だった。
「えっ」
極めつけには聞き覚えのある声が聞こえてきて、背筋がピンっと伸びるのを感じる。
この声…絶対そうだ……。
「い、一ノ瀬、さん……」
「月城……くんっ!?」



