「え…あ、あの……?」
「みんなが来るまでまだ時間はあるんだし、少し話さない?いつも朝一人で寂しかったからさ」
月城くんにも座るように促してそう言うと、月城くんは焦ったように口を開く。
「で、でも、僕なんかで、いいんですか……?しょ、正直僕、話すの苦手で……」
「いいのいいの!話すの苦手なんて普通のことだよ?それに、私は月城くんと話してみたい」
私がそう言うと、返事はないものの、首を縦に振ってくれた。
「じゃあ、私が勝手に質問していくね!えっと、まずは〜兄弟はいる?」
「え、えっと、一人っ子…です」
「そうなんだ!私はね、中二の弟がいるんだけど、なんでこんなにいい子なんだろうってくらいいい子でね!」
それから、私達は他のクラスメイトが登校してくるまで話し続けた。
+ + +
「紗良っ、おはよう!」
「美渚!おはよ〜。…あれ?朝から本屋さんに寄ったの?」
スクールバッグとは別に雑誌サイズのビニール袋も持っていて、気になって聞いてみる。
でも、こんな時間から開いてる本屋さんなんてあるかな……?
「ううん、これは昨日買ったものだよ。紗良にも布教したくて持ってきたんだ〜」
「なるほど、あのモデルさんか」
「そうそう!今、推しが初めてドラマ出演してて、そのインタビューが載ってる雑誌を見つけたから衝動買いしちゃった!」
美渚には推しのモデルさんがいるらしく、普段からその人の話は聞かされていて、人並み程度には詳しくなった。と、思う。
入学当初から何度かそのモデルさんを布教?されているんだけど、なかなか良さがわからなくていまだに美渚の期待には答えられていない。
「あ〜、ほんとにかっこいい……陸斗くんみたいな人がクラスにいたらなぁ〜」
「あ、写真載ってるね。どれどれ、今回はどんなビジュアルな……んっ!?」
あ、あれ、なんだか既視感があるのは気のせいかな……?
この顔、朝にも見たような気が……。
そんなわけ無いと思いながらも後ろの席で本を読んでいるはずの彼に視線を向ける。
いつも通り本を読んで入るけど、どこか様子がおかしい。
何かに怯えているような……。
……まさか、ね。
なんて思いながらも、やっぱり気になるから、視線は月城くんに向けながら美渚に声を掛ける。
「ね、ねえ、そのモデルさんの名前、なんだっけ……」
「えっ、忘れたの!?陸斗だよ〜、苗字は公開されてないから、この名前も本名なのかわからないけど」
美渚のその言葉に、月城くんはあからさまに反応して、よく見ると十月だというのに汗をかいている。
やっぱり……美渚の推しの『陸斗』は月城くんなんだ……。
「紗良?おーい、紗良〜?聞いてる〜?」
美渚にそう声をかけられていたみたいだけど、私はびっくりしすぎて何も聞こえていなかった。



