翌日から、私は目の回るような忙しさに追われていた。
打ち合わせ、進行表の修正、衣装の最終確認。
チャペル・ド・ルミエールの一日は、いつも通り、正確に流れていく。
「神崎さん、次の式の動線、ここ少し変えたいんですが」
「わかりました。司会と音響にも共有しますね」
そんなやり取りを、何度も繰り返した。
返事をしながら、手は止めない。
考えるより先に、体が動く。
それが、私の仕事のやり方だった。
気づけば、同じ忙しさを抱えたまま、
ひと月が過ぎていた。
それでも。
片づけを終えて、廊下を歩いているとき、
肩にかけたバッグの重さが、ふと気になった。
何気なく中を確かめると、
白いハンカチが目に入る。
一枚の花びらを包んだままの、それ。
ハンカチの白さに、
あの夜のカウンターが、一瞬だけ重なった。
バーに行く時間なんて、ない。
そう思うのに、行かない理由を、自分に言い聞かせていることに気づいてしまう。
忙しいだけ。
それだけのはずなのに。
