祝福のあとで

三度目は、会場リハーサルだった。

 音響、照明、司会。
 全員が揃い、現場が一気に動き出す。

「ここ、照明落とすタイミング、五秒早められますか」

 あきの声が飛ぶ。

「可能です」

 スタッフが即座に応える。

 そのやり取りを横で見ながら、
 ひかりは淡々とメモを取る。

「神崎さん」

 名前を呼ばれて、顔を上げる。

「この立ち位置、どう思います?」

「……一歩、後ろですね」

「同じ意見です」

 短いやり取り。
 確認だけ。

 でも、その「同じ」が、少しだけ胸に残る。

 リハーサルが一段落し、
 人がはけた会場で。

「あき」

 思わず、名前を呼びそうになって、
 ひかりは口を閉じた。

 代わりに。

「高橋さん」

 あきが振り返る。

「はい」

「……いえ、特にありません」

 一瞬だけ、不思議そうな顔をして、
 すぐに仕事の表情に戻る。

「何かあれば、すぐ言ってください」

 それは、昔から変わらない言葉だった。