祝福のあとで


 打ち合わせは一時間半で終わった。

 新郎新婦を見送り、
 サロンの扉が閉まる。

 空気が、ひとつ静かになる。

 私は資料を揃えながら、次の確認事項を頭の中で並べていた。

 そのとき。

「神崎さん」

 背後から声がした。

 私は振り向く。

 あきが、テーブルの端に立っていた。
 資料を片手に、視線だけこちらに向ける。

 “仕事の話”をする顔。

 私はそれに合わせる。

「共有事項ですか?」

「はい。いくつか、確認したくて」

 短い沈黙。

 ほんの一拍だけ、仕事の皮膜が薄くなる。

 でも、あきはすぐに続けた。

「当日、進行の主導は式場側で問題ないですか。こちらは外部演出のタイミングだけ押さえます」

「はい。進行は私が組みます。演出のタイミングは——ここですね」

 資料を指で示す。

 あきは頷きながら、ペンでチェックを入れる。

「あと、持ち込み音源。提出期限、少し前倒しできますか」

「可能です。音響には私から共有しておきます」

 会話は事務的で、
 必要なことだけが行き来する。

 それなのに、
 そのリズムがどこか懐かしい。

 懐かしい、と思ってしまったことが、
 私には少しだけ不愉快だった。

 あきはメモを閉じると、視線を上げた。

「——久しぶりですね」