祝福のあとで


 ブライダルの専門学校に通っていた頃、
 私は結婚というものを、もっと単純で、もっと幸せなものだと思っていた。

 一生に一度のドレス。
 永遠を誓う言葉。
 すべてがきらきらしていて、疑う余地なんてなかった。

 恋愛も、たぶんその延長線上にあると思っていた。
 だから、夢ばかりが先に育って、現実に追いつけなかった。

 誰かと未来の話をした記憶は、数えるほどしかない。
 ——ずっと昔の話だ。

 働くようになってから、
 私は“その後”をたくさん見てきた。

 式が終わったあとに訪れる沈黙。
 価値観の違い。
 誰にも言えない不満。

 もちろん、幸せな夫婦もいる。
 それは嘘じゃない。

 でも、全員がそうじゃないことも、私は知ってしまった。

 結婚は、素敵なものだ。
 そう言い切るには、少しだけ現実を見すぎた。

 それでも私は、今日もここに立っている。
 ドレスを整え、進行を確認し、祝福の言葉を口にする。

 役割としての私は、揺るがない。

 ただ——
 それが自分の人生と重なることは、もう想像できなくなっていただけで。