祝福のあとで


披露宴の翌日、
 私はBar Afterの扉を押した。

「昨日は……ありがとうございました」

 それだけ言うつもりだった。

 彼は頷いて、
 「何にしますか」とは聞かなかった。

 出てきたのは、
 いつものグラス。

 私は一口飲んで、息をつく。

「……助かりました」

「無事なら、よかったです」

 それだけ。

 でも、その夜は、
 いつもより少しだけ、
 長く座っていた。

 店を出てから、
 私はしばらく歩いて、立ち止まった。

 助けてもらった。
 それだけのはずなのに。

 連絡先も、
 次の約束も。

 何も残らなかった。

 ——それなのに。

 胸の奥に残っているものだけが、
 少し、困った。