静かなる、恋の包囲網

「大丈夫か?」

その後、雄平が駆け寄るのと入れ違いに男は逃げていった。
当然のように後を追おうとした雄平だったが、塔子のただならぬ様子を感じ取り、諦めたようだ。
顔面蒼白でガタガタと震える塔子の背中に手を当て、落ち着かせようとする雄平。
しかし塔子の目からは涙が溢れだした。
この涙が恐怖から来るものなのか、安堵の涙なのか、それは塔子にもわからない。
そもそも男が最後に口にした言葉はどんな意味があるのか、今となっては幻聴だったのではないかとさえ感じられたが、ただ止めどなく涙は流れ続けた。

「もう大丈夫だから安心しろ」

雄平は塔子を支えながら、ただ寄り添っていた。

一体どれぐらいの時間が流れたのだろう。
5分か、10分か、道端にたたずんでいた以上、そう長い時間ではなかったと思うが、塔子にはとてつもなく長い時間に感じられた。
そしてその間にも、塔子の心は恐怖に押しつぶされそうだった。