静かなる、恋の包囲網

賑やかな笑い声の絶えない秘書課の新年会は、2時間ほどで終了し、先輩や取締役たちは二次会へと流れていった。
当然、塔子にも誘いの声はかかったが、丁寧にお断りした。

―――本当にいい人たちでよかったわ。

駅まで向かう帰り道、繁華街を歩きながら、塔子は新年会の余韻に浸っていた。
全く経験のない秘書課に異動になったときにはどうなることかと思ったが、先輩たちも仕える相手である取締役たちも気さくで話しやすい。
向こうが塔子のことをどう思っているのかは別として、塔子にとってはとても働きやすい職場だ。
そんなことを考えながら駅に向かっていると、急に声がかかった。

「ね、お姉さん」

それは明らかに塔子に向けられた声。
しかし、こんな時も塔子は反応しないことにしている。

「ねぇ、ちょっと」

少し強くなった声と同時に、塔子の肩に手が乗せられた。
―――キャッ
声にならない声を上げ、塔子は体を硬くする。