静かなる、恋の包囲網

「田所さん、こっちこっち」

2階へ上がって行くと、和室の座敷が貸し切りになっていた。
大企業であるタカミヤホールディングスの重役たちも顔を出すという新年会がどこで行われるのか、塔子は少し不安に感じていたが、会社近くの小さな小料理屋で開催されると聞き、正直ほっとした。
どこか高級ホテルのレストランや老舗イタリアンなんて言われたらどうしようと思っていたからだ。

「田所さんは歓迎される側だから、今日はこっちだよ」

30人ほどが座れるように用意された部屋の前列に案内され、塔子は少し戸惑ったが、この状況で拒めるわけもなく素直に従うしかない。

「ごめんごめん、遅れたかな」

その後、いつもよりも軽い口調で雄平が入ってきた。

「大丈夫ですよ、副社長。みんなまだ集まっていません」
「そうか、それはよかった」

そして、雄平は迷うこともなく塔子の隣の席に座った。