静かなる、恋の包囲網

「それにしても、雄平くんも大きくなったなぁ」

仕事の話が終わり、コーヒーが運ばれてきたところで、高尾取締役がしみじみと言った。

「やめてください」

雄平は照れくさそうにする。
どうやら二人は昔からの知り合いのようだ。

「雄平くんがアメリカから帰ってきて、お父さんも喜びだろう」
「えー、まぁ」

――ん?
その時、塔子はわずかな違和感を覚えた。
上機嫌で話し続ける高尾取締役に対し、雄平も笑顔を見せていた。
しかし「お父さん」という言葉が出た瞬間、雄平の表情が一瞬だけ曇った。
短い時間とはいえ、専属秘書として側にいる塔子は、その変化を見逃さなかった。