静かなる、恋の包囲網

「事情はわかったが、副業はだめだ。無理をして体調を崩されても困るし、秘書としての業務に影響が出るのも困る」
「そんなことはしません」

塔子は強く言い返したが、今のこの状況では何を言われてもしようがない。

「とにかく副業はやめてくれ。給料が不足なら改善を検討するから」
「そんなわけにはいきません」

さすがに創業宗家の直系御曹司は言うことが違うなと思いながら、塔子は慌てて否定した。
もちろん収入が増えるなら、仕事を2つ掛け持ちする必要はなくなる。
しかし、だからといって給料を上げてくれと言うのはおかしい。

「じゃあ、どうするんだ?」
「アルバイトを辞めることを条件に、このまま勤務を続けさせていただけるのであるなら、出費を節約します」

正直、学生時代の自分の生活を思えば、今の暮らしはとても良くなっているし、海斗もあと数ヶ月すれば研修医とはいえ社会人となり、お給料をもらえるはずだ。
決して楽ではないが、何とか生活できなくはない。
とにかく今の仕事を失いたくない一心で、塔子は雄平を説得した。

「わかった。副業やめてくれるのなら、もう何も言わない」

納得したのかどうかはわからないが、雄平は塔子のアルバイトを公表しないと約束してくれた。