静かなる、恋の包囲網

「どうかした?」

固まったまま動かない塔子に雄平が首をかしげる。

「いいえ」

塔子はできるだけ動揺を見せないように用意されたスリッパを履き、廊下の先へと歩き出した。
白で統一された廊下の先にあるガラスの扉を開け、雄平に促されるまま入った部屋。
どうやらリビングのようだが、そこは塔子が見たこともないような空間だった。

「すごい」

普段自分の思いを口に出すことのない塔子だが、この時ばかりは心の声を抑えることができなかった。
毛足の長い絨毯の敷き詰められたリビングはとても広く、大きなテレビとモダンな家具に、何人掛けだろうと思うほど大きなソファーセットが置かれている。
そして何よりも驚いたのは、部屋の片側一面ガラス窓になっており、今も都会の夜景がキラキラと輝いていることだった。

―――すごい、凄すぎる。

世の中にはこんな世界が本当にあるのだと、塔子は呆然としていた。