静かなる、恋の包囲網

「ここですか?」

10分ほど走って車が止まったのは、都心の一等地。
ちょうど開発の進む人気の街で、誰もがおしゃれをして行き交う都会のど真ん中だった。
高層ビルが並ぶ中でもひときわ目を引く40階越えの建物は低層階が商業施設になっており、塔子でさえ知っているハイブランドがいくつも出店している。
そして、建物の上層部20階がマンションとなっているらしい。

「さあ、どうぞ」

車を降りた雄平が助手席のドアを開ける。
しかし、塔子は緊張のあまり身動きが取れない。

「抱きかかえた方がいいかい?」
「いえ、結構です」
「じゃあ、行こうか」

慌てて車を飛び降りた塔子を雄平が笑っている。
この時、塔子は雄平について来てしまったことを少しだけ後悔した。