静かなる、恋の包囲網

子供の頃から、『笑わない子』『無口な子』そして、『何を考えているかわからなくてかわいげのない子』と言われて育った。
そんな自己主張の苦手な性格を恨めしく思ったこともあるが、今はその性格がうれしくさえあった。
だって、自分の本心を雄平に知られることなく、大学時代あこがれていた彼のそばにいられるのだから。

―――これは神様からのクリスマスプレゼントかもしれないな。

場違いにも塔子はそんなことを考えた。

「家はどこ?」
「えっと、その先の信号を曲がって、」

住宅街から大きな道に回ったとしても、車に乗れば数分の距離。
塔子はもうじきアパートが見えてくるだろうと予測して、カバンから家の鍵を取り出そうと、

―――あれ?

「どうした?」
「アパートの鍵が・・・」

カバンに入れていた鍵が見当たらない。

「もしかしてさっき、落としたのか?」
「そうかも、しれません」

雄平に助けられ、寸前のところで転ばずに済んだが、カバンはアスファルトにぶちまけてしまった。

おそらくその時に落としたのだろう。

「今から戻ってもこの暗さだと見つかるかわからないが・・・」
「大丈夫です。今日はどこかホテルを取ります」

スペアキーがないわけではないが、誰かに鍵を拾われているかもしれないと思うと気持ちが悪い。
痛い出費にはなるが、明日にでもアパートの鍵を交換した方がよさそうだ。