私、王子様に独占されたい。

朝の教室、教室の空気はざわざわしているけれど、俺は日和の方にそっと目を向ける。

昨日の自己紹介のとき、彼女が少し赤くなったことがずっと頭から離れない。
あのときは短い会話だったけど、胸が少しだけ苦しくなるくらい、意識してしまった。

(よし……今日も少しだけ話しかけてみよう)

日和はノートに向かって何かを書いている。
俺が近づくと、彼女は慌てて顔を上げる。

「おはよう、清水さん」

びくっと体を強張らせる。
「え……おはよう……ございます、月岡君」

ああ、やっぱり「月岡君」か。
その呼び方を聞くと、「蓮」って呼んでほしいなってちょっと思っちゃう。

「昨日は……自己紹介のとき、ちょっと緊張させちゃったかな」
俺は少し笑いながら言う。

日和は視線を机に落とす。
「そ、そんなこと……」
少し頬を赤くしている。

「でも、俺も昨日は少し緊張してたんだ。話すの苦手じゃないけど、自己紹介ってやっぱり緊張するから」
肩をすくめながら、自然に笑う。

日和は驚いた顔をして、ぽつりと言う。
「えっ……月岡君も……?」

「うん。意外に思うかもしれないけど、誰とでもすぐに話せるわけじゃないんだ」

そのあと俺は、軽く話題を変えてみた。
「そういえば、清水さんって授業中とかノートに何書いてるの? 昨日の自己紹介のこととか気になったんだけど」

日和は少し戸惑いながらも答える。
「えっと……日記みたいなこととか、授業のメモとか……」

「へぇ、面白そうだな。書くときに何か決まりとかあるの?」
俺は少し興味を持って尋ねる。

「うーん……特に決めてないけど、思ったことをそのまま書くことが多いかな……」

「なるほど。そういうところも、清水さんらしいんだね」
思わず微笑む俺に、日和は小さく笑う。
その笑顔だけで、胸がぎゅっとなる。

(なんで……ただ話してるだけで、こんなにドキドキするんだろう)

「じゃあ……今度よかったら、書いてること、少し教えてくれない? 興味あるし」
俺は少し真剣な目で提案する。

日和は迷ったあと、頷く。
「う、うん……いいよ……」
小さい声だけど、自然な笑顔も見せる。

俺は心の中でほっと息をついた。
昨日よりも少しだけ距離を縮められた気がする。
まだ小さな一歩だけど、二人の時間は確かに動き始めた。

窓から差し込む光が、二人の机の間に柔らかく差し込む。
この一歩が、いずれ大きな一歩だったって、思えるといいな…
木漏れ日の中で、そう感じていた。