放課後、いつものカフェに入る。
「今日も混んでるね」
美琴ちゃんが言いながら、空いている席を探した。
「ほんとだね。でも、ここは落ち着くから」
席に座って、ショーケースを見る。
今日の日替わりは、オペラ。
濃い色で、少しだけ大人っぽい。
「最近、どんどんお客さん増えてる気がするんだけど」
「ここのケーキがおいしくて、かわいいからだよ。
雰囲気もかわいいのに、落ち着くし」
美琴ちゃんは、何か言いたげに少し間を置いた。
「……陽凪みたいに、ケーキ目的で来てる人もいるだろうけどさ」
「うん」
「それだけじゃない人も、結構いそうだなって思って」
「?」
首を傾げると、美琴ちゃんは小さくため息をついた。
「マスターのおいしいケーキが、いろんな人に知ってもらえるの嬉しいし。
理由は、なんでもいいかなぁ」
そう言うと、美琴ちゃんはそれ以上、何も言わなかった。
注文を取りに来たのは、あの店員さんだった。
丁寧で、変わらない距離。
「ご注文、決まりましたか?」
いつもと同じ声。
それだけなのに、なぜか今日は少しだけ意識してしまう。
