放課後、また同じカフェに入った。
「今日も来ちゃったね」
美琴ちゃんが笑う。
「だって落ち着くし、おいしいケーキあるし」
それ以上の理由は、特にない。
いつもの席に座って、メニューを見る。
日替わりケーキは、オレンジのシャルロット。
見た目がやさしくて、名前も可愛い。
「ご注文、決まりましたか?」
顔を上げると、あの店員さんが立っていた。
近いのに、距離はちゃんと保たれている。
「えっと……」
迷っていると、彼が少しだけ首を傾げた。
「この前も、来てましたよね」
心臓が、ほんの一瞬だけ跳ねた。
覚えられている、という事実よりも先に、
変なことしてなかったかな、って考えてしまう。
「はい。ここのケーキが大好きで…よく、来ます」
そう答えると、彼は小さく笑った。
「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」
それだけ言って、すぐにカウンターへ戻っていく。
「覚えられてるじゃん」
美琴ちゃんがからかうように言う。
「たまたまだよ」
そう言いながら、フォークを手に取る。
オレンジの香りが、ふわっと広がった。
いつもの時間。
いつもの席。
でも今日は、いつもの午後が
ほんの少しだけ、特別になった気がした。
