カウンター越しに、彼は無意識に 彼女の席を目で追っていた。 いつもと同じ常連客。 ─そう思っていたはずなのに。 さっきの「ご褒美です」という声が、 どうしてか頭から離れなかった。 空いた皿を下げながら、 甘い香りの残るテーブルに目を留める。 ――あんなふうに、 甘いものを食べる人だっただろうか。 すぐに首を振って、彼はカウンターに戻った。 仕事中だ。 それ以上考える必要はない。 そう思ったのに。 その違和感だけ、静かに残っていた。