甘さを重ねて、恋になる



家に帰ってからも、
午後のことが、頭から離れなかった。


(この前も、来てましたよね)


ただそれだけの言葉なのに、
何度も思い出してしまう。


常連さんなら、当たり前。
そう言い聞かせても、
胸の奥が、少しだけざわついた。


(毎日来てる人、他にもいるよね)



制服を脱いで、
鞄を置いて、
いつものことをしているはずなのに、
落ち着かない。


名前を呼ばれたわけでもない。
特別なことを言われたわけでもない。


それなのに。


(覚えられてる、ってこと……?)


すぐに、首を振る。


(違う。
きっと、みんなに同じこと言ってる)


そう思う方が、楽だった。


次の日も、
私はまた同じカフェに入っていた。


理由はいつも通り。
落ち着くし、
おいしいケーキがあるから。


それ以上の意味は、ない。


……ない、はず。