カフェを出てからも、
さっきの一言が、頭から離れなかった。
今日は、遅めなんですね。
(……覚えてる、ってことだよね)
歩きながら考えて、
でもすぐに首を振る。
(いや、常連さんならみんな覚えてるのかも)
それなら、特別でもなんでもない。
そう思おうとしているのに、
胸の奥が、少しだけ落ち着かなかった。
「ねえ」
美琴ちゃんが、横から覗き込む。
「さっきから、ずっと考えてるでしょ」
「考えてないよ」
即答したつもりだったのに、
声が少しだけ上ずった。
「ふーん」
美琴ちゃんは、それ以上何も言わなかった。
たぶん気のせいなのに、
あの人が、少し嬉しそうに見えた。
