続けて街の人に事情聴取することになった俺達。
宗教団体本部近くの街の人に聞く。
マンションの扉を叩いて出てきたのは、メガネを掛けた知的男性だったが。
この人物は知っているかと尋ねると、「あぁ、あの黒猫に被せていた仮面を縫われて殺された人でしょ?」と帰ってきた。
「仮面を縫われて殺されたってーーあれって黒猫に被せるものだったんですか?」
「ええ……。
あの人達は昔からあの黒猫は因縁がある悪魔的存在だーーって言ってて………。
町中で「√の力を封印するために、黒猫の仮面を外してはならない!!」って町中で信者たちが歩き回ってたことがあって。
それは、それは、不気味でした」
「あの黒猫の仮面は、力を抑えるって名目で作られたんですか?」
「そうみたいですね………。
何せあの黒猫は、生まれた時期が2を2倍すると死ぬっていう因果がどうのこうのだとか言ってましたから………」
「それは信者がということですか?」
「いいえ……違いますよ。
教祖本人が、街のスピーカーで大暴れしたときに聞いたんです」
「街を支配したってことですか!?」
「だから、公安に睨まれてるんだと思います。
流石に怖いとは思いますね………。
ごめんなさい。
もういいですか?
時間があれなので」
と住人は締め切った。
「これは、大変だね。
なんだかあの宗教の人………やっぱり僕怖いな」
「何かあるかもしれん。
今度は、この人物に聞いてみよう。
隼人ーー今から私の車に乗り給え」
「え……教授、どこに行くんですか?」
「宗教団体の隠れ信者に会いに行くんだ。
早く支度したまえ」
またまた、厄介だ。
どうせ、警察にこき使われてるだけなのに。
*
最初にあったあの副団長の嫌な空気とは一変して、その人物が住む場所は普通の一軒家だった。
ピンポンを押して入ると、やはり変な感じはしない一般的な一人暮らし女性の家だった。
「ようこそお越しくださいました。
入って下さい」
「お菓子食べれるかな?
そうだったら、僕嬉しいな」
「今回は駄目だ。
勇斗くん」
「あれ?
教授にしては珍しい」
「何せ相手は、教団の隠れ愛人だったみたいだからな」
ゾッとして、ゴクリと息を呑む。
というか、最初にそれを言ってくれよ……。
準備を済ませた女性が、茶室に入ってきた。
少し濃い化粧をしているところさえ、今夜は何か予定があったりするのかと恐ろしくもなったが。
「えー、事件当日ーー何をしてらっしゃいましたか?」
「えー、そうですね。
教祖様の部屋の掃除と、「聖者の薔薇の墓場」の管理を朝早くからやっていました」
「それを証明できる人物はいますか?」
「多分……公安の警察官に聞けば分かると思おます。
前々から、あの墓場は公安に睨まれているんだと噂されてましたしーーー。
私の様子も見ていると思います」
署長から預けられた、証言ノートをちらりと見るとそこに証言はあった。
この人は犯人では今のところない気がする。
「でもですね、少し気になることがあってーーー私が当日の夜明け今朝教祖様の部屋を掃除して出たら凄まじい足音が聞こえたんです」
「足音……ですか?」
「正直入れるのは、私と元奥様と、教祖様しか入れない場所なのですが……。
どうしてそんな足音が大量に聞こえるのか怖くて………咄嗟に鍵を締めて震えて寝たんです」
「ということは、事件当日の朝にはもう殺されていた可能性が高いということだな。
複数人に持ち運びばに遺体を遺棄させたのだろう」
「まぁ、教祖様を疑っているのですか?」
まずいーー怒ってる。
「ま……まだ、創作段階ですので。
分かりませんよ」
すると前のめりになっていた、女性はすっと戻った。
「ですが、教団の方々が自主されたとは聞きましたがね。
私の情報では。
主犯の方が、出てきたのでしょ?」
思わず俺達は「え?」と固まった。
「主犯とは?」
女性信者は呆れたように、ため息を付いた。
「だから言ってるじゃありませんか。
この教団で自分で反抗をやった人がいたってさっき連絡があったんです。
警察に出頭したとのことですよ?」
それはいつ………だ……。
「そんな……嘘だーー。
だって署長からは、何も聞いてないし………」
「隼人くん。
これは多分、ソクラテス団の横入れだよ」
スマホをかざして来た、教授。
その写真に写っていたのはーーソクラテス団の団長と署長がカフェの一角で談笑している場面だ。
「多分、裏を取られたのだろう。
自分達の手柄を取られるのかもしれないと思って。
相当大きい事件に発展しているみたいだからな」
「それって………まずくない?
僕もう、ここにいれなくなっちゃうの?」
先回りされたのなら、もうやることは出来ない気がするがーー。
「君達は馬鹿なのか?
僕は、その後彼を偵察したのだよ。
時刻を見たまえ」
じっと目を凝らすと、そこの時刻はーー俺と勇斗がカフェにいた時間帯。
「まさか………何かあると思って、一人で偵察してきたんですか?!」
「当たり前だ」
「何で俺達も誘わなかったんですか!!」
「だから、僕はいつも言っているだろ?
数学を学びたいのなら、躓いて学ぶ。
遠回りして、答えをすぐに出してはいけない学問だって。
間違いをどうやって、答えに昇華させるのかが大切だといつも言ってるじゃないか。
遠回り無しで、人は成長しないし正論は人を傷つける凶器にもなる」
「だからってーー教授が死んだら、このクラブなくなるんですよ!!
しっかりしてくださいよ!!」
「僕は教授だ。
君たちを守る義務もある。
そして、育てるという使命があるんだ。
僕は数学は躓いて学ぶ学問だと言うのを広めて生きると教授になることを決めたんだ。
だからこそ守るために、君たちに教える為に一人で偵察したんだよ」
迫真の顔で迫られた俺達二人は、ぐっと息を呑む。
それは覚悟を決められた大人の強さを見せつけられた。
これがーーー数学を学ぶ者の覚悟なんだろうかと、考えさせられる程に。
「それで話を戻せば、その若男性の首を絞めた手形は一致。
逮捕案件だそうだ」
「ほら見なさい。
やっぱり、教祖様は犯人じゃないんだわ。
証拠があるじゃない」
「だけども、前回も言ったとおりだ。
一人にしては手が込みすぎている。
やはり、真犯人は別にいる」
ぐっと黙り込む女性信者。
不安そうに覗き込む勇斗と俺の目線を、教授はどう捉えてるんだろう。
「それと、でっぷりした公安警察にもあったのだがーーその人が君を見たとの宣言があった。
まず君が犯人ではないのは確実だが、異臭がしたとのことだ。
鼻をつんざくような、死臭と化学薬品のような匂いが」
「化学薬品ー?」
「それを君は、証言しなかったね?
同じ空気にいた時間帯だとは聞いたが?」
女信者は黙り込む。
「やはり、君もーーー疑っているんではないか?
愛人として、都合良く扱っている真犯人を」
「黙秘します」
それ以上は話してくれなかった。
*


