推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 胸の奥がギュウッと締め付けられる。
 まさかの急展開。
 推しから想いを告げられるなんて、妄想の中でしか起こらないと思っていた。
 推しにガチ恋したって報われない。
 そうわかっていたからこそ、私は推しを推すために心に蓋をしたはずだった。
 それなのに、その蓋を推し本人にこじ開けられるなんて。
 推しに「好き」と言われる日が来るなんて。
(……都合よすぎない? まさか、夢?)
 私は思わず自分の頬をつねった。
「い、石川さん?」
 突然の行動に、成瀬さんが目を丸くする。
(……痛くない。やっぱり夢?)
 反対の頬もつねると、成瀬さんは堪えきれないようにクスクス笑った。
「どうしてそんなことしてるの?」
「だって、夢だと思って」
 頬をつねったまま答えると、成瀬さんは優しく微笑んだ。
「夢じゃないから」
 そう言って、私の頬から片手をそっと引き剥がす。そのまま私の手を包み込むように握り、真剣な目で見つめてきた。
「俺、本気だから」
 まだ片頬をつねったままの私は、きっとひどく間抜けな顔をしている。
 それでも成瀬さんは笑わず、真っ直ぐ私を見つめる。
「返事は今じゃなくていい。これからの俺を見てて」
 そう言って、握っていた手を離した。
「成瀬さん……」
 名前を呼ぶと、彼の肩が小さく揺れた。切なげに揺れる瞳から、彼が緊張しているのだろうことが伝わってくる。
(ああ、本当にこの人は私を想ってくれているんだ)
 そう思った瞬間、もう片方の手も頬から離れた。
 胸が高鳴り、頬が熱くなる。
(推しに好きだと言われたんだ。私、成瀬さんに告白されたんだ)
 遠いと思っていた人が、私を見ていてくれた。
 思わず、ふふっと笑みがこぼれた。
 でも……。
 ふと疑問が浮かぶ。
「いつから?」
「え?」
 成瀬さんが驚いたように目を瞬く。
「いつから、私のこと好きでいてくれたの?」
 そう尋ねると、成瀬さんは少し困ったような顔をした。
「それ、重要?」