翌朝、薄明かりのなか目が覚めた。
すぐに昨日の舞台の記憶が押し寄せてくる。
夢だったら良かったのに。
そう思うと、また胸が苦しくなる。
でも、私がどんなに望もうと、あの光、あの歌声、そしてあの人との距離。それは全部、現実だ。
ベッドの中でぼんやりと天井を見つめながら、私は深く息を吐いた。
泣きながら眠ったせいか、目元が重い。きっと腫れている。
今日が休みで良かった。誰にも会わずにすむから。
私は重たい体を起こすと、キッチンへと向かう。
冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出し、腫れているであろう目元にそっと押し当てる。ひんやりと冷たい感触が気持ちいい。
これは、あとでしっかりケアした方がよさそうだな。
そんなことを思いながらボトルの蓋を開け、コクコクと飲んでいると、隣室から洗濯機の音が微かに聞こえてきた。
洗濯機の音って、結構響くんだな。
昨夜待ち続けた隣人の生活音。隣室から響いてくるその音に、私はしばらく耳を傾ける。
こうして隣から生活音が聞こえてくることに安らぎを覚えるようになったのは、いつからだっただろう。
ぼんやりとそんなことを思っていると、洗濯機の音が止まった。
今ベランダに出れば、きっと洗濯物を干しに出てきた成瀬さんに会える。
条件反射のように動きかけた体が、次の瞬間ピタリと止まる。
慌てて洗面所へ駆け込むと、洗顔フォームを手に取り泡立てていく。そしてそのまま顔に塗りたくった。
成瀬さんに会いたい。でも……。
ぐるぐると思考の迷路を彷徨いながらも、体は勝手に動く。乱暴に化粧水をすると、私はベランダに続く窓を勢いよく開けた。
案の定、ベランダに居た成瀬さんが物音に驚いたようにこちらへ顔を出す。そして、私と目が合うといつものように優しく微笑んでくれた。
「おはよう。早いね。……あ、もしかして俺がうるさくして起こしちゃった?」
昨日の舞台とは違う、いつもの成瀬さんの顔。
私もいつも通りに笑って見せる。
いつも通り……。そう、いつも通りに。
「おはようございます。いえ。目が覚めただけですから」
そう答えると、良い目覚めだとアピールするように私は大きく伸びをした。
ちょっと白々しかっただろうか。
でも、成瀬さんは何も気づかなかったかのように「そっか」と相槌を打ち、洗濯物を干す作業に戻った。
私は心の中でホッと息をつく。
いつも通り。これが私と成瀬さんの距離。心地よいお隣さんの距離。推し活にはちょっとズルい隣人特権。
すぐに昨日の舞台の記憶が押し寄せてくる。
夢だったら良かったのに。
そう思うと、また胸が苦しくなる。
でも、私がどんなに望もうと、あの光、あの歌声、そしてあの人との距離。それは全部、現実だ。
ベッドの中でぼんやりと天井を見つめながら、私は深く息を吐いた。
泣きながら眠ったせいか、目元が重い。きっと腫れている。
今日が休みで良かった。誰にも会わずにすむから。
私は重たい体を起こすと、キッチンへと向かう。
冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出し、腫れているであろう目元にそっと押し当てる。ひんやりと冷たい感触が気持ちいい。
これは、あとでしっかりケアした方がよさそうだな。
そんなことを思いながらボトルの蓋を開け、コクコクと飲んでいると、隣室から洗濯機の音が微かに聞こえてきた。
洗濯機の音って、結構響くんだな。
昨夜待ち続けた隣人の生活音。隣室から響いてくるその音に、私はしばらく耳を傾ける。
こうして隣から生活音が聞こえてくることに安らぎを覚えるようになったのは、いつからだっただろう。
ぼんやりとそんなことを思っていると、洗濯機の音が止まった。
今ベランダに出れば、きっと洗濯物を干しに出てきた成瀬さんに会える。
条件反射のように動きかけた体が、次の瞬間ピタリと止まる。
慌てて洗面所へ駆け込むと、洗顔フォームを手に取り泡立てていく。そしてそのまま顔に塗りたくった。
成瀬さんに会いたい。でも……。
ぐるぐると思考の迷路を彷徨いながらも、体は勝手に動く。乱暴に化粧水をすると、私はベランダに続く窓を勢いよく開けた。
案の定、ベランダに居た成瀬さんが物音に驚いたようにこちらへ顔を出す。そして、私と目が合うといつものように優しく微笑んでくれた。
「おはよう。早いね。……あ、もしかして俺がうるさくして起こしちゃった?」
昨日の舞台とは違う、いつもの成瀬さんの顔。
私もいつも通りに笑って見せる。
いつも通り……。そう、いつも通りに。
「おはようございます。いえ。目が覚めただけですから」
そう答えると、良い目覚めだとアピールするように私は大きく伸びをした。
ちょっと白々しかっただろうか。
でも、成瀬さんは何も気づかなかったかのように「そっか」と相槌を打ち、洗濯物を干す作業に戻った。
私は心の中でホッと息をつく。
いつも通り。これが私と成瀬さんの距離。心地よいお隣さんの距離。推し活にはちょっとズルい隣人特権。

