一方その頃、レイモンドは私室のソファに腰をうずめ、うなだれていた。
窓から差し込む夕暮れの光が、焦燥に揺れる彼の背中に暗い陰を落としている。
ソフィアは本気で離縁を望んでいる――そう悟った瞬間から、レイモンドの心臓は、冷たく凍りついたようだった。
(彼女も、俺と同じ気持ちだと思っていたのに……)
思い返せば、三年前。
「社交は最低限で構わない。任地への同行も不要だ。ウィンダム家の親族とも、関わる必要はない」
そう告げたのはレイモンドの方だった。
どうせ期限付きの結婚だ。夫婦仲が悪いと噂が立つのは困るが、かといって、露出を増やせばぼろが出る――それを防ぐには、周りとの関わり合いを徹底的に減らすべきだというのが、レイモンドの考えだったからだ。
だがそれに反して、ソフィアは全面的にレイモンドをサポートした。
レイモンドが社交の場に出る時は必ず伴ってくれたし、細やかな振る舞いで周囲の好感を得て、レイモンドの評価を自然に引き上げた。
軍人のレイモンドは一年の半分以上を任地で過ごしたが、その長い不在期間も、文句ひとつ漏らさず屋敷を守り、レイモンドの家族や親戚たちへの気遣いも怠らなかった。
レイモンドの同僚たちが、堅物男の嫁はいったいどんな女なのかと無礼な視線を向けたときでさえ、彼女は笑みを絶やさなかった。
他国の軍事関係者とその家族を招いた晩餐会では、五ヵ国語を巧みに使いこなし、夫人やその子供たちを楽しませた。



