ソフィアがアリスのレース布の出来を見ていると、ふと、アリスが声を潜めた。
「ところで、ティータイムはどうでしたか? 離縁のこと、申し上げたんですよね? 旦那様は何と?」
その問いに顔を上げると、アリスは興味津々といった様子でこちらを見ていた。
ソフィアはあっけらかんと答える。
「“考えておく”と仰っていたわよ」
すると、アリスは目をぱちくりと瞬かせた。
「えっ、本当に? 本当に旦那様は、"考えておく"と仰ったんですか?」
「ええ」
「……そんな。絶対反対なさると思ったのに!」
アリスは不満げな声を上げる。
「もう、アリスったら。そんなはずないでしょう? 旦那様は女性がお嫌いなのよ。無事に家督も継ぎ、ようやく契約満了で、ほっとしているに決まっているわ」
「そうでしょうか? 私には、とてもそうは見えませんけど」
「見えない? そうね、それはそうよ。だってわたしも旦那様も、仲の良い夫婦を演じているんですもの。お互いを愛しているように見えなきゃダメなのよ」
「……本当に、演技なんですかねぇ」
アリスはぼそりと呟くと、ソフィアの着替えを手伝い始める。
けれどその間も、ソフィアの視線の先、鏡に映るアリスは、どこか納得のいかない顔をしていた。



