アリスはソフィアが輿入れの際、実家から連れてきた侍女だ。歳はソフィアの三つ下。
出会ったのはソフィアが九つのとき。
アリスは通りで雨に打たれながら、必死に花を売っていた。
擦り切れた服に、穴の空いた靴。ぼさぼさの髪。親がいないのは一目瞭然だった。
あまりに不憫で見ていられず、ソフィアが全ての花を買ってやると、アリスは「これで弟の薬が買えます。感謝します、お嬢様」と泣きながら微笑んだ。
ソフィアはそんなアリスの健気さに心を打たれ、弟共々屋敷に迎え入れたのである。
以来、アリスはソフィアを姉のように慕い、また、ソフィアもアリスを実の妹のように可愛がった。
ふたりはあくまで主人と侍女という関係だったが、その絆は実の親兄妹よりも深かった。
三年前、ソフィアがレイモンドと契約結婚を結ぶことになったときも、親兄弟には隠しても、アリスにだけは包み隠さず全てを話した。
契約結婚の満了を迎えたら、貴族という身分を捨てて帝国に渡り、服飾店を開きたいということも。――それくらい、ソフィアはアリスを信頼している。



