旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜


 元メイドの証言をもとに、この三年間のソフィアの行動も洗った。
 だが、男と会った形跡も、手紙のやり取りも一切見つからない。

「この三年間、彼女が個人的に接触した相手は、親族以外では社交界の女性のみ。少なくとも、俺の知っている相手ばかりだった。つまり、現状彼女に不審な点は一つもない」

 レイモンドが言い切ると、エミリオは「東方人か」と呟き、目を細めた。
 その表情には、何か引っかかりを覚えたような色が浮かんでいる。

「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
「あ……いや」

 珍しく口ごもるエミリオに、レイモンドは眉をひそめる。

「何かあるなら言え」

 数秒の沈黙のあと、エミリオは顔を上げ、問いかけた。

「お前、『サーラ・レーヴ』っていう帝国の服飾ブランド、知ってるか? 一年くらい前から、社交界の女性たちの間で密かに話題になってるんだが」

(『サーラ・レーヴ』?)

 聞いたことがない。
 レイモンドは眉間の皺を深くする。

「知らないな。それと彼女に、一体どんな関係がある?」

 訝し気に訪ねると、エミリオは神妙な顔で答えた。

「そのブランドを最初に広めたのは、夫人だって聞いたことがあるんだよ。しかも、そのブランドの窓口(エージェント)はヴァーレン商会。あの商会は東大陸発祥だ。もしかしたら、何か関係があるかもしれないと思ってな」