「何だよ、辛気臭い顔して。嬉しくないのかよ」
そう言いかけて、ふと何かに思い当たったように目を細める。
「もしかして、何か夫人の情報を掴んだのか? ここのところ、夫人について調べてただろ?」
レイモンドは眉をひそめる。
「どうしてそれを知っている」
「どうしてって、そもそも言い出したのは俺だぞ? で、どうだった?」
実のところ、この一週間、レイモンドはソフィアの過去の交友関係を洗っていた。
帰りが遅かったのは、マルケス大尉の代役を務めていたからだけではない。
訓練の合間や夜間に、彼女の素行を調べていたのだ。
だが、一週間かけても埃一つ出なかった。
男の影はなく、借金の記録もない。 全くもって潔白な身だった。
唯一掴んだのは、ソフィアの実家――ハリントン家を辞めた元メイドからの証言だ。
曰く、「ソフィアが学生だった頃、ときおり街で会っていた男がいた」という。
レイモンドは息を吐き、躊躇いがちに告げる。
「彼女には学生のとき、定期的に会っている男がいたことを、かつてハリントン家に務めていたというメイドから入手した」
エミリオは目を見開く。
「うわ。メイドにも当たったのか? 本気だな」
「元、だ。それに、お前が言ったんだろう。彼女には男がいるんじゃないかと」
「まぁ、そうなんだけどさ。それで、その男っていうのは?」
「東方人に見えたと言っていた。歳はソフィアと同じほど。髪は黒に近く、身なりは整っていたと。だがそれ以上は不明だ。男の素性も、二人の当時の関係性も」



