再び歩きながら、ソフィアの思考は自然と三年前へと遡った。
三年前、帝国移住を言い出したのは自分だったが、実務的な準備を進めたのはイシュだ。
帝国に服飾店を構えたいと告げたときも、彼は笑ってこう言った。
「だったら、今のうちからブランドを立ち上げておいたらどう? ヴァーレン商会が仲介すれば、君の名前は表に出ない。うまくいったらそれでよし。三年後帝国に正式に店を構える。――失敗しても、また一から考えればいい。三年もあるんだし、ゆっくり気長にやればいいよ」
その助言とともに、ブランド立ち上げの事務手続きを一手に引き受けてくれたのも彼だった。
その代わり、ソフィアは三年間、社交界の情報を彼に渡し続けた。
商売の世界で情報は何よりも価値がある。それはイシュにとっても、ソフィアが立ち上げたブランド「サーラ・レーヴ」にとっても同じこと。
だからこそソフィアは社交活動に精を出し、立場を築き上げてきたのだ。
ふと、胸の奥に不穏な考えが浮かぶ。
「……もしかしてイシュは、わたしにこのまま社交界での立場を維持してほしいと考えているのかしら。帝国で店を持つよりも、ここにいるわたしの方が利用価値があるって……」



