イシュが屋敷を後にしたあと、ソフィアはアリスを伴い庭園に向かった。
白い日傘を差し、白い薔薇の咲き誇る花壇の間をゆっくりと進んで行く。
春の終わりの陽射しはやや強く、石畳の上に落ちる木漏れ日が、まだら模様を描いていた。遠くでは噴水の水音が涼やかに響き、小鳥がさえずっている。
しばらく無言で歩いたあと、ソフィアはふと足を緩め、日傘の影からアリスを見やった。
「ねぇ、アリス。さっきのイシュ……何だか様子がおかしかったような気がするの。あなたはどう思った?」
するとアリスは一瞬考えるように視線を落とし、数秒置いて、顔を上げる。
「そうですね、私もそう思いました。もっとこう、穏やかで感動的な再会を予想していたんですけど。……三年ぶりですから、ぎこちなかったのでしょうか」
「……ぎこちない。そうね、それもあるだろうけど……」
ソフィアは、日傘の柄を握る手に力を込めた。
イシュの口調は終始穏やかだった。
けれど、「離縁」という言葉が彼の口から出た瞬間、胸の奥に冷たいものが走った。責められているような、突き放されるような感覚。
アリスの言う通り、三年ぶりの再会だから、たまたまそう感じただけなのか。それとも、イシュは何かしら気分を害していたのか。
「わたしがちゃんと離縁できるのか、って確認したわよね、彼」
「ええ、そうですね」
「なのにその次は、残りたければ残ってもいいって。……意味が分からわないわ」
「……確かに、矛盾しているような?」
しかも、最後に言い残した「近いうちに」という言葉。
それが、妙に耳に残っている。



