「当然よ。イシュには、離縁に向けて社交は縮小すると伝えてあったのよ? それなのに、わたしの名前であんなに大量の商品を注文して……しかも新聞でこれだけ騒ぎ立てられたら、帝国にいる彼の耳にも届いてしまうわ。きっと変に思うはずよ」
そんな心配をするソフィアに、アリスはあっけらかんと笑った。
「でも、子どもたちは喜んでくれたじゃないですか。嬉しかったんですよね?」
「そりゃあ、嬉しかったわよ」
「だったらいいじゃありませんか。それに、イシュ様はそんなことじゃ怒りませんよ。むしろ喜ばれるんじゃないですか? 売り上げに貢献したのですから」
「それは、そうかもしれないけど」
確かに、イシュはちょっとやそっとのことでは機嫌を損ねない。
温厚で穏やかで、大抵のことは「何とかなるよ」で済ませてしまう。
それでも、どうしてこんなにも胸がざわつくのか、自分でもわからなかった。
「だったら、どうしてそんなに浮かない顔をしているのですか? この一週間、溜め息ばかりですよ」
「……自分でも、わからないわ」
「もしかして、旦那様の帰りが毎日遅いからだったりして」
「! そんなはずないでしょう!」
思わずむきになって否定する。
確かにレイモンドはここのところ帰宅が遅い。別の隊の大尉が急病で、復帰までの間、その隊の管理を任されているからだ。



