そのときだ。不意に、アリスの弾んだ声がした。
「今日も絶賛されてますね! 一週間も経ったのにまだ紙面を飾るなんて凄いことですよ!」
ソフィアはハッと顔を上げる。アリスが新聞を覗き込み、誇らしげに微笑んでいた。
「ええ、そうね。本当に」
が、そう答えつつも、ソフィアの表情は晴れない。
浮かない様子のソフィアの表情に、アリスは小さく息をはく。
「もしかして、まだ気にされているのですか? 旦那様がプレゼントを注文した先が、ヴァーレン商会だったこと」
ソフィアはますます難しい顔になる。
ヴァーレン商会とは、はるか東大陸に本拠を置く五大商会のひとつ。
東西を結ぶ独自の海陸一貫の流通経路を握り、直轄の従業員は一万を超える。
この商会なしでは、東西大陸間の交易は一日たりとも回らない――そう言われるほどの影響力を誇っていた。
もちろん、この国にも支部があり、広場の催しでレイモンドが不足分のプレゼントを注文した先は、そのヴァーレン商会だった。
問題は、そのヴァーレン商会の跡取りであるイシュ・ヴァーレンが、ソフィアのビジネス・パートナーだということだ。
帝国支部の責任者であるイシュとは、最後に会ったのは三年前。
しかし、ソフィアが三年前に密かに立ち上げ、社交界でその名を広めている服飾ブランド『サーラ・レーヴ』は、表に出られないソフィアの代わりに、イシュが代理で代表を務めてくれている。
そのイシュの商会に、自分の名前で大量のプレゼントを注文した――この事態を、イシュはどう受け取るだろうか。そう考えると、ソフィアは胸の奥に小さな不安を覚えた。



