旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜




 ――それから二年と十カ月。
 ソフィアは妻としての役目を全うした。

 レイモンドを慕っていた女性たちからの嫉妬ややっかみ、嫌がらせに耐え、舅や姑、親戚一同に対して良い嫁キャンペーンを続けてきた。
 レイモンドの上司や部下もきちんともてなし、夫を立てる妻を演じ続けた。それもこれも、全ては高額報酬のために。

 つまり、ソフィアにとってこの離縁の申し出は至極当然のこと――だったのだが……。



「旦那様? どうかなさいましたか?」

 レイモンドは、カップの縁に視線を落としたまま沈黙した。
 その様子に、ソフィアは首を傾げる。

(どうしたのかしら? 急に黙ってしまって)

 しばらくして、レイモンドはゆるゆると顔を上げ、低い声で言った。

「……いや、何でもない。……そのことは、考えておく」

 ソフィアは若干の違和感を覚えたものの、その返答に安堵し、やわらかな笑みを浮かべる。

「はい、よろしくお願いしますね、旦那様」



 ――だが、このときのソフィアは知る由もなかった。
 レイモンドが、婚姻継続を望んでいる(・・・・・・・・・・)ということを。