するとそんなとき、部屋の扉がノックされる音がした。
「入れ」と短く返事を返すと、 老齢な執事が部屋に入ってくる。
「お呼びでしょうか」
「ああ。急で悪いが、明日までにこれを手配してほしい」
レイモンドは机の上から一枚の書類を取り上げ、執事に手渡した。
そこには、ソフィアから頼まれた孤児院慰問に関する日程と、そのために必要な手配リストが細かく記されている。
「二日後、ソフィアと外出することになった。その為のリストだ」
短く命じると、執事は書類の内容に視線を落とし、目を見張った。
「……これを全て、明日までに、でございますか?」
「ああ」
「なるほど。一つお尋ねしたいのですが、これは奥様のご希望で? それとも……」
「彼女の希望を元に、俺が考えた。何か変か?」
「いえ、まさかそのようなことは」
レイモンドは口端をわずかに上げる。
「どうせやるなら盛大にやらなければな。彼女に恥はかかせられないだろう?」
執事は、その一言に小さく息を吐いた。
「旦那様は本当に、先々代に似ていらっしゃる。やることなすこと全てが大胆不敵。この老体をどこまでこき使えば気が済むのやら」
「何だ、できないのか?」
「いえ、この程度のこと造作もありませんが」
「なら頼む」
レイモンドは一拍置き、付け加える。
「ああそれから、手配はすべてソフィアの名で行うように。今回の企画の立案者は、彼女だからな」
そうしてにこりと微笑むと、執事はもう一度溜め息をついた。
「承知いたしました。滞りなく手配いたしましょう」
恭しく目礼し、静かに部屋を後にする。
レイモンドはその背中を見送って、視線を再び窓の外に戻した。
夜空には雲間から淡い月がのぞき、星々が美しく煌いている。



