旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜


 そんなことを思っていると、「侯爵夫人」と不意に横から声をかけられる。

「来てくださって嬉しいわ」

 それは、ブルックリン伯爵夫人だった。
 ソフィアは笑みを浮かべる。

「ごきげんよう。本日は素敵な催しにご招待いただき、ありがとうございます」

 当たり障りない言葉を返すと、夫人は、ソフィアに腕を貸しているレイモンドを見上げ、頬を緩めた。

「ふふっ。腕まで組んで、本当に仲がよろしいこと」
「まぁ、そんな。夫人ほどではありませんわ。ところで、伯爵はどちらに? ご挨拶申し上げたいのですが」
「あら、いいのよ、挨拶なんて。主人は奥でカードゲームをやってるわ。まだ劇も始まっていないのに。何も賭けていなきゃいいけど。あの人、弱いのに負けず嫌いだから」

 夫人は片手を頬に当て、「困るのよねぇ」と眉を下げるのだが、実際のところは、全く気にしていない様子である。

「ところで、侯爵閣下はゲームはお好き? 軍人は賭け事を好むと聞きますけれど」

 今度はレイモンドに話を振りながら、奥のテーブルをちらりと見やる夫人。
 確かに、その視線の先の将官たちは、賭け事の話で盛り上がっているようだった。

 レイモンドは眉尻を下げる。

「どうでしょう。誘われればしますが、少なくとも、首都(こちら)にいる間は断るようにしています。妻と過ごす時間が減ってしまいますから」

 すると、夫人はパッと目を見開いて、「まあまあ! 昼間からお熱いこと!」と満足げに微笑んで、去っていった。