そんなことを思っていると、「侯爵夫人」と不意に横から声をかけられる。
「来てくださって嬉しいわ」
それは、ブルックリン伯爵夫人だった。
ソフィアは笑みを浮かべる。
「ごきげんよう。本日は素敵な催しにご招待いただき、ありがとうございます」
当たり障りない言葉を返すと、夫人は、ソフィアに腕を貸しているレイモンドを見上げ、頬を緩めた。
「ふふっ。腕まで組んで、本当に仲がよろしいこと」
「まぁ、そんな。夫人ほどではありませんわ。ところで、伯爵はどちらに? ご挨拶申し上げたいのですが」
「あら、いいのよ、挨拶なんて。主人は奥でカードゲームをやってるわ。まだ劇も始まっていないのに。何も賭けていなきゃいいけど。あの人、弱いのに負けず嫌いだから」
夫人は片手を頬に当て、「困るのよねぇ」と眉を下げるのだが、実際のところは、全く気にしていない様子である。
「ところで、侯爵閣下はゲームはお好き? 軍人は賭け事を好むと聞きますけれど」
今度はレイモンドに話を振りながら、奥のテーブルをちらりと見やる夫人。
確かに、その視線の先の将官たちは、賭け事の話で盛り上がっているようだった。
レイモンドは眉尻を下げる。
「どうでしょう。誘われればしますが、少なくとも、首都にいる間は断るようにしています。妻と過ごす時間が減ってしまいますから」
すると、夫人はパッと目を見開いて、「まあまあ! 昼間からお熱いこと!」と満足げに微笑んで、去っていった。



