――言いすぎだという自覚はあった。
けれど、宝石を返されたとして、売ることができないのは事実だ。一度でもソフィアの手に渡った宝石を、お金に換えることなどできるはずがない。
となれば、未練と一緒に海に投げ捨ててしまうしか、方法はないだろう。
とはいえ、ここでソフィアを困らせたいわけではない、というのもまた事実で。
レイモンドは必死に頭を巡らせ、話をすり替える。
「――が、君の言い分も理解できる。そもそも、俺が勝手に贈ったものだ。君が望んだものでもないものを、受け取れと言われても困るのは当然だろう。だから、こうしないか?」
「……?」
「二日後、俺に一日、君の時間を与えてほしい。ふたりで、どこか出掛けよう」
瞬間、ソフィアの両目が瞬く。
「お出かけですか? それは、社交ではなく?」
「社交ではない。私的な外出だ」
「……それと宝石に、どのような関係が?」
「君の宝石を、外出の費用に充てるんだ。レストランや劇場を貸し切るもよし。遊覧船の上で演奏会を開いたり、大型気球を手配してもいい。どうだ? それなら、無駄にはならない」
「……!」
ソフィアの瞳が、呆れと困惑に揺れた。
「まるで新聞の紙面を飾りそうな内容ですわね」
「いいじゃないか。君はまだ俺の妻であり、侯爵夫人なのだから。もちろん、行き先は君の希望を全面的に受け入れる。――だから、な? 考えておいてくれ」
レイモンドの強い押しに、ソフィアは溜め息をつく。
「わかりましたわ。けれど、行先はわたくしが決めさせていただきます。それでいいですか?」
「ああ、勿論だ。二日後が楽しみだな」
こうしてレイモンドは機転を利かせ、どうにかデートの約束を取り付けた。
それからほどなくして、馬車は午後の陽光をまといながら、ブルックリン伯爵家の門を静かにくぐっていった。



