正直、エミリオの言ったように、売却されることを考えると胸が痛む。
けれど、プレゼントを突き返されるよりは、何十倍もマシだった。
そんな気持ちでつい口にした言葉だったが、それを聞いたソフィアは一層真面目な顔をする。
「ですが、旦那様はあの宝石を気持ちだと仰いました。事前に取り決めた報酬ではなく、気持ちだと」
「!」
「それを受け取ることは、旦那様のお気持ちをもてあそんでいることになりますもの。わたくし、不誠実なことはしたくありませんの」
「……っ」
その言葉に、レイモンドは言葉を失った。まさか、ソフィアがそんなことを考えているとは夢にも思わなかったからだ。
と同時に理解した。これは拒絶だ。ソフィアは、レイモンドの気持ちを受け取る気はない、と示しているのだ。
(まさか、相手の男に義理立てしているのか? 金銭は受け取れても、気持ちは受け取れないと……?)
――なるほど。
既に理解していたつもりだが、これは、一筋縄ではいかなそうだ。
とはいえ、一度贈ったものを返されるのは困る。
それこそ、レイモンドのプライドが許さなかった。
レイモンドは、ゆるりと笑みを浮かべる。
「あれは既に君のものだ。返されても困る」
「……ですが」
「そもそも、一度贈ったものを突き返す方が不誠実だと思わないか? それこそ、俺の君への好意を踏みにじる行為だ。君が不要だというなら、売るなり、人にやるなり好きにしたらいい」
「――っ」
そう言って神妙な顔をしてみせると、ソフィアは、「あ」と大きく目を見張った。
けれどそこは流石というべきか。簡単に引く彼女ではない。
「申し訳ありません。旦那様のお気持ちも考えず。ですがやはり、受け取るわけには参りません」
「俺が、売っても構わないと言ってもか?」
「はい」
「君が返還した宝石は、すべて海の藻屑となるだろう。それでもか?」
「……藻屑……ですか……?」
「ああ。でなければ、俺にあの宝石をどうしろと言うんだ? 仮にも妻だった女性に贈ったプレゼントを、俺の手で換金しろというのか? それとも、主のいなくなった宝石を毎夜眺め、未練がましく君の姿を思い出せとでも?」



