旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜


 初めて聞く言葉だ。
 ソフィアは目を見開く。

「ああ。俺は今、結婚相手を探している。家督を継ぐのにどうしても相手が必要でな。だが、端的に言って俺は女性が苦手で、結婚生活を長く続ける気はないんだ。後継ぎを作る気もない」

 ソフィアは驚いた。

 急に何を言い出すのだろう、という気持ち以上に、まさかそんな手があったなんて――という気持ちが勝っていた。

「つまり、白い結婚ということですか? 家督を継いだら、離縁したいと?」
「まぁ、そういうことだ。後継者は分家から養子を取れば十分だからな。報酬は言い値でいい。とは言え、離縁となると流石に女性側に不利だろう。お互い干渉せず暮らしていければ、こちらとしては御の字――「素敵!」

 ソフィアは目を輝かせた。

『白い結婚』『形だけの妻』――しかも報酬付きで、レイモンドは、できれば離縁を望んでいる。
 それはソフィアにとって極めて理想的な提案だった。

 なぜなら、彼女には叶えたい夢があったからだ。そのためには、個人的な、まとまったお金が必要だった。


 ソフィアはその場で快諾し、後日正式に契約書を取り交わした。

1,婚姻期間は三年間
2,お互いへの干渉、詮索をしない
3,対外的には仲の良い夫婦を演じる
4,報酬は月々三百万ギールとする

 大まかにこれらの条件で契約内容をまとめ、一週間後には婚約を発表。
 本来一年以上かけるはずの婚約期間を三ヵ月に短縮し、結婚したのである。