(男嫌いを治すのは難しいが、そうではないというのなら、まだ俺にも望みはある。それに、もし本当に彼女に恋人がいたとして、生活費のために彼女に偽装結婚を命じるような男だったら、彼女を任せるわけにはいかないからな)
――まずは、本当にソフィアにそんな相手が居るのかどうか、探ってみなければ。
そんなことを考えていると、不意に、ソフィアから話しかけられる。
「旦那様」
ソフィアの声は、いつも通り落ち着いていた。
けれど、二人きりでいるせいか、微かに気まずさが感じられる。
(しまった。彼女を楽しませなければならないのに、考え事に集中していた)
反省しつつも、レイモンドはにこやかな笑みを返す。
ソフィアの方から声をかけてくれるなんて、久しぶりだ――と、喜びを抱きながら。
「ああ、ソフィア。どうした?」
すると、ソフィアは平然と言った。
「これまでに旦那様からいただいた、宝石のことなのですけれど」
「宝石?」
「はい。それを、すべてお返ししたくて。旦那様のお部屋に運ばせればいいでしょうか? それとも、わたくしの部屋に置いたままでも?」
「――ッ」
瞬間、レイモンドは絶句した。
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
(……返す、だと?)
一度贈った宝石を? 全て?
冗談かと思ったが、ソフィアは大真面目だ。
レイモンドは、必死に平静を取り繕う。
「……理由を、聞いてもいいか?」
「理由ですか? それは勿論、受け取る理由がないからです」
「理由がない? だが、君は高額な報酬を必要としていただろう? あれだけの宝石だ。売れば金貨の山になるというのに」



