旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜



(男嫌いを治すのは難しいが、そうではないというのなら、まだ俺にも望みはある。それに、もし本当に彼女に恋人がいたとして、生活費のために彼女に偽装結婚を命じるような男だったら、彼女を任せるわけにはいかないからな)

 ――まずは、本当にソフィアにそんな相手が居るのかどうか、探ってみなければ。

 そんなことを考えていると、不意に、ソフィアから話しかけられる。


「旦那様」


 ソフィアの声は、いつも通り落ち着いていた。
 けれど、二人きりでいるせいか、微かに気まずさが感じられる。

(しまった。彼女を楽しませなければならないのに、考え事に集中していた)

 反省しつつも、レイモンドはにこやかな笑みを返す。
 ソフィアの方から声をかけてくれるなんて、久しぶりだ――と、喜びを抱きながら。

「ああ、ソフィア。どうした?」

 すると、ソフィアは平然と言った。

「これまでに旦那様からいただいた、宝石のことなのですけれど」
「宝石?」
「はい。それを、すべてお返ししたくて。旦那様のお部屋に運ばせればいいでしょうか? それとも、わたくしの部屋に置いたままでも?」
「――ッ」

 瞬間、レイモンドは絶句した。
 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

(……返す、だと?)

 一度贈った宝石を? 全て?

 冗談かと思ったが、ソフィアは大真面目だ。
 レイモンドは、必死に平静を取り繕う。

「……理由を、聞いてもいいか?」
「理由ですか? それは勿論、受け取る理由がないからです」
「理由がない? だが、君は高額な報酬を必要としていただろう? あれだけの宝石だ。売れば金貨の山になるというのに」