旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜


「夫人には、好きな男がいるんじゃないのか?」

 ソフィアが『白い結婚』を承諾した理由。
 エミリオはそれを、『結婚を約束した男』がいるからなのではと、そう言った。

「もし相手が平民だとしたら、生活費を稼ぐために、お前と契約結婚したっておかしくない」
「受け取った報酬を、別の男との生活に使うつもりかもしれないぞ」

 ――だから、大量の宝石を贈るような馬鹿なマネはやめろ、と。

 その言葉を聞いたとき、レイモンドは胸が締め付けられる思いがした。
 そのもしも(・・・)を考えると、ショックのあまり心臓が止まるかと思った。

 けれど、それから数時間が経った今は、驚くほど冷静だ。

(好きな男……か。ならば、尚更諦めるわけにはいかないな)

 そもそもレイモンドは、この一週間の間、ソフィアは男に興味がないのだと思っていた。
 どころか、男嫌いなのではとすら考えた。

 そうでなければ、破格の報酬を受け取れる契約結婚の延長を、あれほど簡単に断るはずがない。
 金銭が目的ならば、たとえひと月だろうと延ばした方がいいに決まっている。

 けれど、ソフィアは迷いなく断った。
『今後のことはちゃんと考えている』と、言いきって。

 あの言葉の意味が、『真に愛する男と一緒になるため』だとすれば、納得だ。
 となれば、話は早い。