旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜


 ――そんなやり取りをして、出席を決めた午後のチャリティー。

 本当は一日休みを取るつもりで仕事を進めていたのだが、三日前、ソフィアの侍女のアリスが、「五日後の奥様のご予定が全部キャンセルになって、お休みをいただいたんです。一緒に街にでも行きませんか?」と別の侍女を誘っているのを聞き、あることを閃いた。

 そうだ、デートに誘おう、と。

 そのために、レイモンドは本来休みを取っていた今日の午前もこうして出勤し、少しでも執務を片付けようと仕事に取り掛かっているのである。



 だが、机に書類を広げ、ペンを取ってしばらくしたとき——ノックもそこそこに、エミリオが顔を覗かせた。


「エミリオ? ……何しに来た」

 エミリオは毎度のごとく、入室の許可を出す前に部屋の中に入ってくる。
 レイモンドは、じろりと見据えた。
 
「お前、いつか軍規違反で裁いてやるからな」
「まぁまぁ、そう言うなって。俺とお前の仲だろう?」
「フン。――で、一体何の用だ。俺は忙しい」

 苛立ちを込めて睨みつけるが、エミリオはそんな視線をものともせず、口元をにやりと緩める。

「忙しいって? そんなに急ぎの仕事なんて無かったはずだけど。そもそもお前、今日一日休みじゃなかったか? ナントカ夫人のチャリティーに参加するって言ってただろ? 無くなったのか?」

 エミリオの問いに、レイモンドは目を細めた。
 ――なるほど。つまりこいつは、俺の様子を探りにきたわけか。

 レイモンドは、「ブルックリン伯爵夫人だ」と訂正しつつも、不愛想に答える。

「チャリティーは午後だ。それまでには戻る。それに、休暇なら二日後に変更した」
「へぇ? 何でまた? 夫人関係か?」
「…………まぁ、そうだ」
 
 随分突っ込んでくるな、と思った。
 だが、自分とソフィアが契約結婚であることを知るのは、エミリオだけ。

 正直、こういった質問は大層煩わしいが、エミリオの第三者的な視点は、今のレイモンドにとって必要不可欠なものだ。あまり無下にはしたくない。