——そして今。
ソフィアは、花で埋め尽くされたダイニングのテーブルで、レイモンドと向かい合っていた。
「お気持ちは大変嬉しいのですけれど……昨日の宝石といい、少々やりすぎですわ」
やんわりと注意したつもりだった。
だが、レイモンドは理解していないのか、まるで褒められたかのように破顔する。
「俺の君への愛を表現するのに、過剰ということはない。本当は屋敷中を花で飾り立てようと思ったが、花を用意する時間が足りなくてな。一部屋で我慢したんだ」
「…………」
(まさか、本気で言ってるの……?)
ソフィアは笑顔を保ったまま、内心で頭を抱える。
(本気かどうかは別として、これじゃあ、わたしが夫に散財させる悪妻みたいじゃない。こんなことなら、以前のそっけない態度の方がまだ良かったわ)
花の香りが濃密に漂う中、ソフィアはそっと微笑む。
「ありがとうございます、旦那様。そのお心はとても嬉しいですわ。けれど、わたくしは一つ一つの花を、じっくり愛でるのが好きですの。ですから次は花束一つに、旦那様のお心をすべて閉じ込めて贈っていただけると、嬉しく思いますわ」
にこりと笑みを零すソフィアに、レイモンドは目を見開く。
まるで本心から驚いているかのように、彼は数秒沈黙し、目を細めた。
「確かに、君の言う通りだな。俺が浅はかだった。次からは、すべて君の言う通りにしよう」
「ええ、そうしていただけると」
ソフィアの言葉に、にこりと微笑むレイモンド。
その微笑みが、天然か計算か——ソフィアには読めなかった。
そもそも彼のこの行動は、本当に愛情表現なのだろうか。ただ、自分の気を引こうとしているだけなのではないか。
敢えて困らせようとしている可能性だってある。
(あとひと月半……前途多難だわ)
何一つ判断がつかないまま、ソフィアは内心大きな溜息をつき、ようやく食事を開始するのだった。



