それから一週間が過ぎた、うららかな春の日の朝のこと。
朝食をとるためダイニングを訪れたソフィアは、大いに困惑していた。
なぜなら、昨夜までは何の変哲もないダイニングだったはずの部屋が、まるで温室のように様変わりしていたからである。
「……えっ?」
(ここ、ダイニングよね?)
視界いっぱいに広がる、色とりどりの花。
壁際の棚、窓辺、テーブルの上、果ては天井から吊るされた花籠まで。部屋中が植物で埋め尽くされている。
その光景に、ソフィアは目を疑った。
(わたし、部屋を間違えたのかしら?)
そう思ったが、瞬間、レイモンドの「おはよう、ソフィア」という声に、間違いなくここがダイニングであることを悟った。
「……おはようございます、旦那様。あの……今日って、何かの記念日でしたかしら?」
絶対に違う、と知りながら、ソフィアはどうにか、契約妻の演技をする。
すると、レイモンドは椅子に腰かけたまま、朗らかな笑顔を浮かべた。
「いいや? ただ、花なら君を喜ばせられるかと思ってな。昨日の宝石は、気に入らなかったようだから」
「…………」
その返しに、ソフィアは微かな苛立ちを覚えた。
——昨日の宝石。とは、あの“宝石箱の山”のことだ。
思い出すだけで胃が痛くなる。
昨日の夕方、司令部から帰宅したレイモンドは、宝石箱を数十個伴っていた。当然、どれも一級品だ。
それを見せられ困惑するソフィアに、レイモンドは「俺の君への愛は、宝石一つではとても表せるものではない。俺の愛を、受け取ってくれるだろう?」とのたまったのである。
(店の商品をほとんど買い占めてくるなんて、喜べるわけないじゃない……!)



