(もしかして、この四日間、旦那様がずっと難しい顔をされていたのは、このせいだったの?)
考えがそこに辿り着いた途端、ソフィアは少しだけ力が抜けた。
正直、それならもっと早く言ってくれれば良かったのに、と思った。
——もっとも、そう簡単に話せることでもなかったのだろうが。
「旦那様が気になさることではありませんわ」
ソフィアは、レイモンドを安心させるべく微笑む。
「それこそ、わたくし自身が望んだことなのですから」
刹那、レイモンドは眉を寄せた。
「だが、子どものいない状態で離縁すれば、君は社交界で居場所を失う。それについては、どう考えているんだ?」
「すべて織り込み済みです。旦那様にご迷惑をおかけすることはございませんし、後のことはちゃんと考えておりますので、心配は無用ですわ」
そもそも、離縁後、この国を出ていくつもりのソフィアにとって、白い結婚こそが最高の条件だった。
つまり、それについて、レイモンドが気に病む必要は全くない。
けれど、レイモンドは納得がいかないようだった。
瞳を揺らし、問いを重ねる。
「……俺には、関係がないということか?」
「そうは申し上げておりません。ただ、白い結婚は旦那様ではなく、わたしにとっても最高の条件だったと申し上げているだけ。それに、十分すぎる報酬もいただいておりますし。ですから、旦那様が気に病む必要は何一つありませんわ」
「…………」
答えの代わりに沈黙が落ちた。
暖炉の火が、ぱちりと弾ける。
(……旦那様、また黙り込んでしまったわ。何を考えていらっしゃるのかしら。離縁の話はどうなったの? わたしから聞くべきかしら)
ソフィアは静かに息を吐き、レイモンドの表情を探る。
だがレイモンドは視線を合わせず、しばらく何かを迷うように、指先でカップの縁をなぞっていた。
やがて、彼はふっと視線を外し、ズボンのポケットに手を差し入れる。
そこから取り出された小さなベルベットのケースが、炎の光を受けて鈍く光った。
レイモンドが蓋を開くと、そこには一対の真珠のイヤリングが並んでいる。
「……これは?」
「君への贈り物だ。任地から持ち帰って以降、ずっと渡せずにいた」
「……それを、どうして、今?」



