そんなある日のこと。
いつものように兄たちと裏庭で遊んでいるとき、木陰で休んでいたフェリクスの袖が捲れ、白い腕に青紫色のあざがあるのが見えた。
「……お兄さま、怪我してる?」
「ああ、これはね。剣術の稽古で、少し打ち身をしただけだよ」
フェリクスは慌てて袖を下ろし、いつもの穏やかな笑顔を浮かべた。
「痛そう……」
「大丈夫だよ。僕は長男だからね。家を守るために、強くならなきゃいけないんだ。これはそのための勲章だよ」
そう言って、フェリクスはソフィアの頭を優しく撫でた。
ソフィアはその言葉を素直に信じた。
(お兄さまはすごい。家のために頑張っているんだわ)
だから、ソフィアは兄のために、小さなおまじないをかけた。
「痛いの痛いの、とんでけ!」
「ありがとう。ソフィアは本当に優しいね」
フェリクスは目を細め、嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔が、ソフィアにとっての世界の全てだった。



