レイモンドの問いに、アリスは激しく動揺した。
ソフィアがイシュに会いに来たことを、当然、レイモンドは知らない。――それを言うわけにはいかない、と、口ごもる。
「あ、あの……わたくしは……その、イシュ様に……」
アリスは言葉を詰まらせ、ただオロオロとするばかりだった。
(……この狼狽えぶりは、もしや)
レイモンドの疑念が深まる。が、そのときだ。
背後から、「ウィンダム候」と声がかけられる。――戻ってきたイシュだった。
「僕が説明するよ」
その声は低く重く、瞳は以前にも増して鋭い。
イシュはアリスの前に立ち塞がるようにして、レイモンドの視線を受け止める。
「フィアが、フェリクス・ハリントン卿に連れていかれた。今、馬車を手配しているから、君も一緒にきたらいい」
「!?」
レイモンドは困惑する。
「どういうことだ……?」
事態があまりにも急で、そしてあまりにも不可解だ。
そもそも、どうしてソフィアとアリスがオルディナにいるのか。ふたりは自分と同じように、イシュに会いに来たということなのか。
それに、フェリクスはソフィアの兄だ。その兄が、どうしてソフィアを連れ去る必要がある?
――何もかもが、レイモンドにはわからなかった。
混乱するレイモンドを、イシュは冷静に見つめる。
「ハリントン卿が向かったのは彼らの実家だろう。詳しい話は馬車の中でするよ。それでいいかい?」
「……あ、ああ」
レイモンドは、この不可解な状況と、事態の異常さに圧倒されるあまり、イシュの言葉に黙って従うことしかできなかった。



